「語学減に反対署名 琉大学生236人分提出」『琉球新報』2009年1月20日
語学授業数の縮減など琉球大学の新カリキュラム案に反対する学生有志ら6人は19日、同案廃止を求めた236人分の署名を大学に提出した。併せて、昨年12月に求めた同案廃止や説明会開催要求への大学側の回答に対する抗議文を岩政輝男学長ら理事3人あてに提出した。署名は学生らが大学内外に呼び掛け集めたという。
抗議文は大学側が「新カリキュラムは新入生対象で、在学生に説明する必要はない」としていることに「これまで通りの授業が受けられないことを告知するのは法人としての責務」と訴えた。また「非常勤の仕事で生計を立てている講師の存在がまったく無視されている」と強く非難した。
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その抗議文書を以下に掲載します。
琉大当局による回答文への抗議
昨年の12月16日に回答文を頂き検討したところ、私たちの予想をはるかに超えた信じがたい内容に学生有志一同驚愕いたしました。回答文を読み、これが学生の語学力向上を目指した新カリキュラムなのかと誰もが目を剥いたのは言うまでもありませんが、回答文を読み進むにつれ、ついには琉球大学、沖縄県の教育の将来に暗澹たる思いを抱かざるを得ませんでした。
私たちは、琉大当局の回答文に関し、次のように抗議します。
①新カリキュラムの対象は新入生であるからといって、私たち在学生に新カリキュラムの説明をしないことの理由にはなりません。琉球大学の教育改革に対し意見することは新カリキュラムの対象者である必要性は全くありません。なぜなら、大学という場所はそもそも学生の自治が約束されているべき場所であり、教育の主体は学生です。学生が賛同しているならまだしも、賛同しているのは学長をはじめ、理事などであり、学生の合意はまったく無視されています。しかもこのような大幅な授業削減を行うのならば、新入生やその関係者に具体的かつ十分な新カリキュラムについて説明する場を設ける責任があるのではないでしょうか。これまで通りの内容の授業が受けられないということを告知することは、法人としての責務でもあるはずです。また、「英語などは新年度から英語力を強めたい学生には希望に沿うようなカリキュラムも用意」するとありますが、そのカリキュラムは具体的にはどのようなものなのか説明を求めます。
②「継続して非常勤講師を希望する方々にはコマ数が削減される以外は迷惑をかけない」とのことですが、そもそも私たちの第一の要求が、非常勤講師のコマ数削減の撤回です。この観点からは非常勤講師の仕事のみによって生計を立てている講師の存在がまったく無視されているものであり、軽薄かつ浅慮なものであるとしか言いようがありません。非常勤講師の側に立ち、その生活にまで配慮した検討を行うべきです。非常勤講師にとっては、収入減に直結するコマ数削減が最大の「迷惑」であるはずです。
③「非常勤講師に75%依存している現在の外国語教育の在り方を改革するのが今回の目的」とのことですが、外国語教育を非常勤講師に依存していて一体どのような問題があるのでしょうか。また、外国語教育の効果が上がっていないという調査結果が卒業生のアンケートから明らかになっていると言っていますが、このような公式の抗議文に対する回答をする際に、そのデータと調査報告書を示さずに説明するとはいかがなものでしょうか。「3・4年次に専門教育の英語等のカリキュラムの開発・提供も提案している」とありますが、そのカリキュラムの内容が非常に不明瞭です。より具体的なカリキュラムの内容を提示してください。さらに語学力強化のために専門教科の授業を英語で行うとのことでしたが、現実的に可能かどうかの調査を行ったうえでの議論とは到底思えません。実際に専門科目において語学教育も兼ねた授業を行った場合、これらの授業で得られる学習効果が、現在の語学授業以上のものである保証はないどころか、語学・専門科目ともにその教育効果が削がれるであろうという予想は難くありません。
④「大学は一人も首にしません」とのことですが、授業のコマ数が減るということは即非常勤講師の収入源が減少していくことに繋がることは、誰の目にも明らかです。このように収入が減れば、たとえ退職を促さずとも、生活のために他の職を求めて退職を余儀なくされるのは、時間の問題です。これのどこが、首ではないと言い切れるのでしょうか。そして、このように考えたとき、今回の授業数削減がまかり通れば、雇用機会が奪われる前例を作ってしまうことになり、前例ができれば私たちが就職したときに同様に雇用機会が奪われる可能性は非常に高くなることは明白です。
⑤「研究しないでもよい非常勤講師や専門学校の教員」とのことですが、どのような意図でもってこのようなことを言っているのでしょうか。これは、「非常勤講師や専門学校の教員」に対する明らかな名誉毀損です。大学の教員と非常勤講師が行う研究にどのような差があるとお考えでしょうか。非常勤講師や専門学校の教員だからといって研究していないという根拠はどこにもありません。たとえ、本人たちのいない場所で発言されたものであろうとも、大学という教育の場においてこのような侮辱が許されてはならないのではないでしょうか。大学がまだ教育の場であると考えるのならば、謝罪を求めます。
その他にも、専門科目の充実を行うことと、今回の語学授業の削減にどのような関連があるのか、幅広い教育の充実とは、どのような計画であるのか、明示されていません。また、その計画が未定であるならば、未定のままで削減のみを行うことで起こる学生の不利益はどのように回答するのか、さらには知識伝授型の教育とリベラルアーツは到底関連性がないように感じられるが、あなた方が考えているリベラルアーツとはどのようなものなのかといった、この紙面上では書ききることのできないほど膨大な質問事項があります。これらの質問事項について、大学は答える必要があるはずです。なぜならばそもそも、大学という教育の場は、市井をも含んだ知の共有のフィールドであるはずです。大学の知の放棄といった暴挙を止める権利は、大学に関わる(それは一地域住民であろうとも)どのような身分のひとびとにでもあるべき権利です。それを阻止せんとするあなた方の態度こそ、知のフィールドに関わるものとして、恥ずべきではないでしょうか。
このような根拠でもって、今回の意見は正当性のあるものだと考えます。私たちは再度、共通教育等新カリキュラムの廃止を強く要求します。また、万が一、あなた方がこの新カリキュラムを正当なものであると考えるならば、そのことについて以上の根拠から、早期に説明会を開くことを要求します。
この抗議文への回答を1月26日(月)までに求めます。
2009年1月19日
学生有志
out@okinawaforum.org